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令和5年度T-GEx研究成果エキシビション -分野の壁を超える-

   2023年11月28日(火)、令和5年度T-GEx研究成果エキシビションを名古屋大学野依記念学術交流館にて実施しました。T-GExフェロー11名、アソシエート8名が参加し、来場者数はオンサイト参加が73名、オンライン参加が11名と、多くの方々にご来場いただき、活気あふれる会となりました。
 エキシビションでは、本事業のT-GExフェローとアソシエートが推進している先端研究に関し、これまでの研究成果および成果物を発表し、幅広い参加者(異なる専門分野の研究者あるいは研究者以外の方)に研究の意義をご理解・共感いただき、今後の発展に向けたアドバイスを頂戴することを目的としておりました。
 また、今回の「分野の壁を超える」というテーマの設定にあたっては、現代における社会的・学術的な要請を意識しました。現代社会が複雑化・多様化する中、一つの学問領域に閉じたままでは世界的課題への解決の糸口が掴めない時代になっています。そうした多層的なアポリアに取り組むためには、分野の壁を超えた学知を生み出す重要性が益々増していると言えます。そうした背景から、第2回目となる今回のエキシビションでは、分野を超えた交流や新たな共同研究を創出する場となるよう企図しました。講演会では、理系研究者として上村 想太郎氏(東京大学)、文系研究者として大山 泰宏氏(放送大学)の計2名の先生をお招きし、パネルディスカッションを実施しました。また、ポスター発表やその内容を紹介するショートプレゼンでも、それぞれの発表者に、自らの専門領域以外の方にも伝わるような工夫をしてもらいました。
 特別講演ならびにパネルディスカッションでは、「分野の『壁』」なるものはそもそも存在するのか、「境界」はたしかにある(より正確に言えば、相互的交流の中で構成されていく)かもしれないが、「壁」とは人間の側が作り出しているのではないか、といった暗黙の裡に前提とされていたことへの問いかけも、演者から投げかけられました。また、エキシビションのテーマを中心軸としながら自由闊達な意見が交わされ、一人であらゆる分野の知識を蓄積するというよりも、まずは自らの専門分野に対する見識を深めるという、一見逆説的な学際性のあり方についても論じられました。加えて、師をはじめとする人との出会いから学び、岐路に立った際に不確実な方向性を敢えて選択してみることなど、学際的研究の遂行に留まらず、今後の職業生活を含め、自らの人生を歩んでいくにあたっての指針をご提示いただきました。ポスター発表やショートプレゼンにおいても、所属学会等ではなかなか触れることのできない研究知見について知るとともに、想像もつかなかった視点からのご意見をいただくことができ、視野や広がるとともに、翻って、自らの専門家集団の前提や価値観の輪郭を浮き上がらせることができたように思います。
 なお、本エキシビションの実施にあたっては、世界で活躍できる研究者戦略育成事業(文部科学省)の採択事業である世界的課題を解決する知の「開拓者」育成事業(T-GEx)に支援いただきました。ここに改めて感謝申し上げます。

 

令和5年度T-GEx研究成果エキシビション幹事
    町田 奈緒士(名古屋大学)
          東 直輝(名古屋大学)
                辻河 高陽(名古屋大学)
田中 秀紀(中部大学)
          大鐘 雄太(南山大学)