このイベントは終了しました。
多くの方にご来場いただき、ありがとうございました。

研究成果エキシビションは、本事業のフェロー・アソシエート・企業アソシエートが推進している先端研究に関しまして、これまでの研究成果および成果物を発表させていただき、幅広い参加者(異なる専門分野の研究者あるいは研究者以外の方)に研究の意義をご理解・共感いただくと共に、今後の発展に向けたアドバイスをいただくことを目的とするものです。
第三回目となる今回の開催テーマは「AI時代の教育と研究」です。現在私たちは、AI(人工知能)による研究と教育の大きな変革期の中にいます。AIが社会において果たす役割は、今後さらに拡大することでしょう。さらにこれまで大学が中心として果たすべき研究と教育は、複雑で多様化する現代社会においては、もはや大学だけに留まるものではありません。新たな価値を創造するため、我々はAIと必然的に向き合う必要があります。
そうした背景から、特別講演として中部大学の藤吉弘亘先生をお招きし、AI研究と教育普及の第一人者の立場からAI時代における教育と研究の在り方についてご講演いただきます。また、ポスター発表では、フェロー・アソシエート・企業アソシエートに加えて一部連携企業の若手研究者にもご参加いただき、自らの専門領域以外の方にも伝わる発表を行います。

開会の挨拶

山中 宏二 (国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学 副総長)

特別講演

特別講演

AIと共に生きる時代における教育と研究へのAI活用

講演者

藤吉 弘亘 氏(中部大学 教授)

人とAIは対峙するものではなく、AIを良くするために人が関わり、また人はAIから学ぶことができる、共にパートナーとなる時代を迎えようとしています。本講演では、研究を助けてくれるAIとして、JSTムーンショットで取り組む「人と融和して知の創造越境をするAIロボット」について紹介します。また、教育への利活用として、講義での生成AIによる活用例として「藤吉AI先生」について紹介します。

ショートプレゼンテーション & ポスター発表

ショートプレゼンテーション

  後のポスター発表の概要を1人1分でお話しいたします。最も優れたショートプレゼンテーション発表者の投票をぜひお願いいたします。


リトリート合宿表彰


ポスター発表

  紙ポスターに加えて展示品のご用意もあります。オンサイトならではの深い議論をお楽しみください。


休憩

  全体アンケートにご回答いただくとともに、ベストプレゼンテーション発表者の投票もぜひお願いいたします。


感想

安浦 寛人 プログラム・ディレクター (世界で活躍できる研究者育成プログラム総合支援事業)


閉会の挨拶

武田 宏子 プログラム・マネージャー (国立大学法人東海国立大学機構 名古屋大学 教授)


開催場所

名古屋大学 東山キャンパス
EI創発工学館 FUJIホール
名古屋市千種区不老町 TEL:052-789-3402

会場内観

  • 2階 FUJIホール(特別講演会場)

  • 2階 多目的スペース(ポスター発表会場)

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お問い合わせ

T-GEx事務局(名古屋大学内)
t-gex[at]t.mail.nagoya-u.ac.jp

※メール送信の際は[at]を@に置き換えてください。

ポスター発表題目・アブストラクト一覧

氏名(所属) 題目・アブストラクト

柘植 紀節

岐阜大学

多波長観測で探る銀河の衝突が引き起こす星間ガスの進化

星の誕生や銀河の進化を理解するためには、銀河を満たす星間水素ガスの探究が不可欠です。その実現には、多波長観測が欠かせません。なぜなら、星間ガスは、-263度の水素分子雲ガスから、約1000万度の高温プラズマまで、幅広い物理状態をとるため、その全容解明には広範な波長での観測が本質的だからです。しかし、これまでの研究では、このような物理状態が大きく異なるガス同士は、互いに影響を及ぼさないと考えられており、波長を跨いだ多角的な研究が立ち遅れていました。私たちの研究によって、異なる物理量を持つガスの状態変化 (相転移) は頻繁に起こっており、銀河進化に重要な役割を果たしていることがわかってきました。特に私は銀河同士の「衝突」に注目して、銀河衝突に起因する大規模な低温水素ガスの衝突による星形成・広がった高温プラズマガスの形成機構を、電波・X線・光赤外線を用いて、従来の波長間の垣根を超えた星間ガスの解析を行うことで調べています。最近では広がったガンマ線放射と電波の比較から、より高エネルギーの現象にも研究を拡張しています。「銀河同士の衝突」 というイベントは宇宙の至るところで起きているため、銀河スケールのみならず、宇宙スケールでのエネルギーや物質の動態を理解する手がかりになると期待しています。

宮武 広直

名古屋大学

宇宙大規模構造の精密測定による標準宇宙模型の検証

天体観測技術の進歩により、宇宙の進化を記述する標準モデルが2000年代に確立された。この標準モデルによれば、既知の物質は宇宙の約5%に過ぎず、残りの95%はダークマターと呼ばれる未知の物質が27%、ダークエネルギーと呼ばれる未知のエネルギーが68%を占めている。2010年代に入り、宇宙の大規模構造を観測した結果、この標準宇宙論に矛盾がある可能性が浮上してきた。本発表では、すばる望遠鏡のHyper Suprime-Cam (HSC) による大規模構造の観測から得られた最新の結果を紹介し、標準宇宙論の矛盾の可能性について議論する。

多田 祐一郎

名古屋大学(YLC)

インフレーション宇宙の確率格子シミュレーション

私たちの宇宙は「インフレーション」と呼ばれる加速膨張期から始まったと考えられている。インフレーションは宇宙を大局的に一様等方にするだけでなく、量子ゆらぎを引き延ばすことで細かいエネルギーのゆらぎを作ることもでき、それらが星や銀河などの宇宙構造のもとになることができるからである。我々は確率解析を用いることで世界で初めて重力の効果も取り入れたインフレーションのコンピュータシミュレータ「STOLAS」の開発に成功した。その応用例として暗黒物質の候補としても期待されている原始ブラックホールの形成量を調べた。

Fanny BELLEGARDE

名古屋大学

Understand mechanisms of plant adaptation to nutritional stress to stabilize crop performance while reducing fertilization.

農業には古くから「苗半作」という、苗の出来によって作柄の半分が決まるという意味の言葉がある。植物は環境ストレスを記憶することができます。窒素栄養は作物の成長と生産性を制御する主要な環境要因ですが、植物が栄養ストレスを記憶しているかどうかは不明です。結果は、植物が窒素欠乏ストレスを記憶して反応できることを強く示唆しています。苗木生産プロセス中にそのような記憶を刷り込むことにより、高収量とストレス耐性の両方を備えた苗木を作成することが可能になります。

黒川 裕介

名城大学

イネ葉のガスフィルムはLGF1遺伝子によって制御される

イネなどの超撥水性を示す葉が水没した際に葉の周囲に形成される空気層のことをガスフィルムという。ガスフィルムが欠損するdrp7変異体では、冠水後のガスフィルムの消失に伴って、水中での光合成量が普通イネのKinmazeと異なり減少することが分かった。drp7変異体とKinmazeのゲノム間でShort chain Dehydrogenase/ Reductase (SDR)ファミリーに属するLeaf Gas Film1 (LGF1)遺伝子に1塩基置換が検出された。生化学的解析により、LGF1はC30:アルデヒドからC30:1級アルコールへの変換に関与してことが考えられた。

宇佐見 享嗣

名古屋大学

昆虫の生物機能を巧みに用いた資源循環型モノづくりの実現

現在、我々の身の回りに存在する機能性分子の多くは、フラスコ内生産、つまり化学合成が常識であり様々な反応や触媒が開発・利用されています。しかし、位置立体選択性や官能基特異性が求められる分子の合成には多段階化に伴うコストと廃棄物問題が深刻となり、喫緊の課題として新たな反応や反応システムの開発が依然として強く求められています。本研究では、機能性有機物質創製の分野に「生物による物質変換・創製技術」を融合させ、有機合成では達成しがたい生物機能ならではの新たなケミカルスペースの開拓について報告する。

Matthew Paul SU

名古屋大学

Targeting the mosquito circadian clock to disrupt hearing function and behaviors

Billions of people worldwide are at risk of diseases spread by Aedes aegypti mosquitoes. Disease control programs which rely on insecticide application are coming under increasing pressure due to rising insecticidal resistance. The development of novel control tools with new targets is necessary but requires a better understanding of basic mosquito biology. Aedes aegypti courtship takes place in aggregations (‘swarms’) which form only at certain times of day. Within swarms, male mosquitoes rely on hearing to identify conspecific females by listening for their sexually dimorphic flight sounds. Both the clock and hearing can thus influence mosquito copulation success. Research in other species has found that the clock can directly influence hearing function, suggesting direct links between the clock and hearing. Disruption of clock function could interfere with hearing, and therefore courtship, behaviors. Working with collaborators in Japan, Taiwan and the USA, I explore the connections linking the clock, hearing and courtship to explore novel pathways to generate new methods of mosquito control.

中山 友哉

名古屋大学(YLC)

メダカから学ぶ動物が季節の変化に適応する仕組み

日本には明瞭な四季が存在しています。私たち日本人は古来より季節の変化を生活に取り入れ、その移ろいを楽しんできましたが、動物たちにとって季節による環境の変化は時として個体の生存にまで影響を及ぼす大きな変化と言えます。そのため、動物は季節の変化を適切に感知し、自身の生理機能や行動を柔軟に変化させる環境適応能力を進化の過程で獲得してきました。しかし、温帯に生息する動物が示す生理機能や行動の季節変化の分子機構やその能力の獲得原理は、未だ完全には明らかとなっていません。私たちは、明瞭な季節応答を示すメダカ(Oryzias latipes)やその近縁種に対して、次世代シークエンサーやゲノム編集といったテクノロジーを適用した解析を行うことで、「動物が季節の変化に適応する仕組み」や「季節の変化に適応するための能力の獲得原理」を明らかにすることを目的として、研究を進めています。また、メダカの研究で学んだ知見を応用することで、気候変動下における持続可能な社会の実装に貢献することを目的としています。本発表では、少しずつ明らかになってきた動物の季節適応の仕組みについてご紹介いたします。

萩尾 華子 

名古屋大学

魚の視覚機能の解明およびウナギ仔魚の餌開発を目指して

効率の良い漁業と養殖業に貢献するために、魚の視覚認知能力を神経科学的に解明することを目指す。マハゼでは、大脳内高次視覚回路などが明らかになった。マハゼよりも認知能力が高いと予想される魚種の視覚回路もフランスCNRS研究所との共同研究により明らかになりつつある。また、ウナギ仔魚の餌開発に向けて、ウナギ仔魚の成長に伴う味覚器の発達や摂食により活動した脳領域も明らかにした。さらに、摂食促進物質を添加した餌を別魚種に給餌したところわずかな成長促進の可能性があり、今後さらに実験を行う。

田村 秀希

豊橋技術科学大学

眼の動きと質感認知

私たちは物体がどのような“質感”を持っているか(例:光沢があるか,透明に見えるか)を瞬時に知覚できる.物体の色や形と同じように,物体の質感もその人自身がどう感じているかは,実際に訪ねてみないとわからない.その一方で,観察者が知覚している主観的な質感を明示的に答えなくても,その人の眼の動きを見ることで,その程度が推定できる.今回はこのような眼の動きと質感認知の関係を報告する.

田尻 大樹

豊橋技術科学大学

手指の生理的振戦を抑制するアクティブ動吸振器の開発

生理的振戦は緊張や恐怖によって悪化することが知られているが,振戦に対する有効な治療法はまだ確立されていない.本研究では,アクティブ型動吸振器を用いて振戦を抑制する方法について検討する.制御にはQ学習を組み込み,個人の振戦の特性にあわせた制御力を生成する.

上野 藍

名古屋大学

MEMS技術が拓くウェアラブルヘルスケアデバイスの研究

本研究では鉄欠乏性貧血を早期に発見可能な「フェリチン検出」×「スキンデバイス」の技術を融合させることで、体内での生理活動を非侵襲的にモニタリングすることを可能とし、従来の鉄欠乏性貧血の検査技術とは一線を画す、バイオマーカー検出技術の創出を目指す。本研究では絆創膏のように皮膚に貼り、汗などの体液から体内の鉄欠乏を示すフェリチンを検出するスキンデバイスを提案しており、本当に使える医療機器をつくるプロセスを考える手法としてスタンフォード大学発バイオデザイン思考に基づき発展途上国でも使用できるデバイス創出を最終目標とする。

東 小百合

岐阜大学

細胞モデルへの応用を目指す低分子コアセルベートの構築

生体内では、区画化がさまざまな生体分子に複雑な機能を発揮させるために重要な役割を果たしている。その中でも、核酸やポリペプチドといった高分子電解質が液-液相分離(LLPS)を通じて局所的な高濃度化によりコアセルベートという球状構造体 (膜のないオルガネラ) を構築する。細胞模倣体の構築を目指して本研究では最近開発したコアセルベート形成分子について、その刺激応答性を含む物理的特性を含めて報告する。

新谷 正嶺

中部大学

心筋サルコメアの周期一定カオス振動の発見

心筋サルコメアで周期一定のカオス振動を発見。37~42℃で温めた心筋細胞の熱筋節振動(HSOs)は、カルシウム濃度変動で振幅や波形が変化し、同期状態が不規則に変わるカオス性を示すが、周期は一定。この現象をS4Cと命名し、新たなカオス的秩序「ホメオカオティック」を見出した。HSOsのカオス性が、カルシウム変化への鋭敏な応答とリズム安定を同時に可能にし、心筋細胞の自律的対処能力に寄与する可能性を示した。

近澤 未歩

名城大学

腸管免疫系を介した食による生活習慣病予防効果の検証

腸管免疫系は細菌感染の予防、恒常性維持などに重要な機構である。腸管は食物や腸内細菌など様々な成分から常に刺激を受けており、その免疫系への影響は健康状態や疾患にも関与すると考えられている。今回、食事の変化が免疫系における抗体産生に及ぼす影響に着目し、生活習慣病発症との関与について明らかにすることを目的とした。具体的には、高スクロース食、高脂肪食など生活習慣病を誘導する飼料を与えたマウスにおいて、腸管免疫系の変化についての検討を行った。

横井 暁

名古屋大学

EV解析による女性のトータルヘルスケア課題解決

ヒトの体液中に存在する細胞外小胞(EV)は、病態に応じてそのプロファイルが変化することが知られており、様々な臨床応用が期待されている。近年、女性のトータルヘルスケアの問題は大きく変化しており、我々は、体液中EVを詳細に解析することで、これらの問題解決に貢献するシーズを創出することを研究目的としている。血液、尿、卵胞液、羊水、腹水など様々な体液を病態に応じて解析し、新規かつ実用的な医療の実現に貢献できるエビデンスの蓄積を行っており、その成果を報告する。

伊吉 祥平

名古屋大学

脂肪組織を標的とした卵巣癌大網転移の新規治療戦略

腹腔内脂肪組織である大網は卵巣癌の播種に伴い、種である癌細胞に対して良い土壌を提供していると考えられているが、その詳細は未だ明らかとされていない。我々はこれまでに、悪性腹水の存在下で初代ヒト脂肪細胞が間葉系幹細胞と癌関連線維芽細胞の性質を併せ持つ大網脂肪細胞由来線維芽細胞(O-ADF)に脱分化し、卵巣癌細胞の増殖および遊走能を増強させることを報告した。本研究では、脂肪細胞の脱分化をターゲットとした新たな卵巣癌治療戦略を確立するため、高い光安定性と腹水適合性を備えた新しい脂肪滴蛍光センサーを開発し、これを用いたアッセイ系によって脱分化阻害剤の探索を行った。得られた化合物のin vitroでの腫瘍増殖阻害作用の結果も併せて報告する。

辻河 高陽

名古屋大学

ゲノム不安定性から迫る脳形成異常症と認知症の融合ゲノム研究計画

脳形成異常症は主に小児に発症し、認知症は成人に発症する。両者は全く異なる疾患と認識されてきたが、これまでの研究から両者のゲノム病態に共通項が明らかになりつつある。そこで本研究では、ゲノム不安定性と体細胞変異が脳形成異常症と認知症の「Missing Link」を解くカギになるという作業仮説を立て、それをロングリード解析をはじめとする先端ゲノム技術を用いて実証し、脳形成異常症に伴う早発性神経変性の予防や認知症の治療開発を目指す。

渥美 範俊

株式会社豊田中央研究所

外傷性脳損傷予測のための脳有限要素モデル開発

脳震盪をはじめとする,交通事故やスポーツでの軽度外傷性脳損傷(mTBI)のメカニズムを解明することは,脳傷害基準の策定や頭部保護デバイスの開発において重要である.これまで,頭部衝撃時の脳の変形を予測することを目的として,脳の有限要素(FE)モデルの開発を進めてきた.本発表では,脳FEモデルの高精度化のための一連の研究について,mTBIのケーススタディも含めて紹介する.

市川 俊輔

三重大学

不安・抑うつに関わる腸内細菌機能

腸内細菌が不安やうつ病に関わることが明らかになりつつある。うつ病自己評価尺度のスコアが高い方々に特徴的に存在するヒト腸内細菌やその代謝機能を明らかにした。加えて、モデル動物メダカの共生細菌が季節性うつ病に似た行動を誘導する現象を説明するために、この共生細菌の二次代謝産物合成遺伝子群をゲノム解析から明らかにした。

星野 藍子

名古屋大学

職場と地域における社会的孤立:『話し相手がいない』ことと孤独感との関連

職場でのメンタルヘルス悪化は社会的問題の一つである。一方で職場や地域での人とのつながりが労働者のメンタルヘルスにどのような影響をもたらしているのか、さらにそのつながりの質的検討は圧倒的に不足している。本研究では職場や地域での孤立とメンタルヘルス、精神的に影響をもたらすつながりの質について報告する。

田中 秀紀

中部大学

心は自分自身を生み出すのか?-「ひきこもり」青年の夢分析から

心がどのように変化するかについては、さまざまな理論があります。ある理論は、心には発達段階があり、その段階に応じて発達すると考えています。別の理論は、心の問題は幼児期の母子関係に起因しており、その母子関係のような何かを心に与えれば、癒されると考えています。それらは実際のところ,心を物や機械のように見なしています。ユングによると、魂は自分自身で変容します。夢の事例を通じて、心が自分自身を引き裂き、その後自分自身で再生することを示したいと思います。

大鐘 雄太

南山大学

日本企業の資金調達の特殊性

日本の企業は、古くから銀行借入を主な資金調達手段として用いてきた。一方、他の先進国では、ベンチャーキャピタルからの出資をはじめとした他の資金調達手段がよく使われている。本発表では、このような違いが生じる原因について、日本の経営者(主に起業家)を対象としたアンケートの調査結果と、それに基づく分析結果を報告する。

樋口 諒

名古屋大学

他分野共同のための三次元モデルの学術編纂版

ビザンティン帝国が残したキリスト教の教会堂は、歴史的・文化的に計り知れない価値を有しているが、その多くは劣化が進んでおり、学際的な協力体制の欠如によって研究の進展が制限されている。本発表ではこの問題に対処するため、これらの教会を豊かな歴史的資源に変える、学術的に編纂された三次元モデルを提案する。学術的信頼性を備え、データベースとして情報が整理された三次元モデルの学術編纂版は、学際的な研究を促進し、新しい洞察を導くことに役立つ。三次元モデルによって正確な空間的詳細を提供することで、壁画や碑文のような重要なファクターの位置を捉え、従来の2Dメディアでは伝えられなかった情報を提供する。学問分野を超えた共通言語として機能するこうした学術編纂版は、領域間での知識のギャップを埋め、共同研究を促進すると共に、ビザンティンの文化遺産の知識を後世に伝えるために役立つ。

松田 健郎

トヨタ自動車株式会社

XR技術を用いた建築教育の定量的評価に関する予備調査:途中結果

新しい教育手法としてのxR技術の有効性を客観的に議論するためには、xR技術が学生の授業内容の理解度および記憶保持にどのように影響するかを定量的に評価する必要がある。本研究は、2024年度シーズ共同研究費の支援を受け、従来は写真や図面などの2Dメディアを使用していた建築教育へのxRコンテンツの利用可能性を探るものである。本報告では建築教育に必要な要件と評価方法を調査した途中結果を紹介する。

李 乃琦

名古屋大学

「古代仏教辞典データベース」の構築・公開に向けた基礎的研究

世界各地に所蔵される「仏典音義」と呼ばれる古代仏教辞典を用いて、「古代仏教辞典データベース」を構築・公開し、人文情報学・日本語学・中国語学・仏教学・文献学・敦煌学の各学術領域を統合した横断的研究を行う。 具体的には、7〜13世紀に執筆された10種類の仏教辞典写本を精査 ・翻刻して、データベースの基盤資料とし、「古代仏教辞典データベース」を構築する。このデータベースは、サンスクリット語、パーリ語、英語、日本語、漢語を検索ワードとして用いて、各仏教辞典の見出し語とその注釈全てを検索できるものである。それを活用することで、原典のサンスクリット語が、各時代・地域・宗派において、どのように翻訳されたか、様々な分野の研究者に示すことができる。

奥原 俊

三重大学

LLMを用いた論点に基づく自動交渉の提案

本研究では、選好順序に合わせた交渉の効用関数を設計することで、複雑な意思決定を支援する大規模言語モデル(LLM)の役割を調査する。具体的には、LLMが交渉シナリオの中で事前に定義された用語を処理し解釈することで、交渉を促進できるかどうかを検証する。その結果、LLMは交渉パラメータを正確に処理し、結果を評価することで、交渉プロセスに有意義に貢献できることが示された。この仕組みは、LLMが合意条件の洗練と明確化を支援し、自動交渉による合意形成の実現性を高めることができる可能性を示している。

野崎 佑典

名城大学

暗号ハードウェアに対するAI技術を用いた物理解析の安全性評価

IoTの普及に伴い小型デバイスで利用可能な軽量暗号が注目されている。軽量暗号は計算量的に安全性が保障されているが,実デバイスで生じる物理情報を利用したサイドチャネル攻撃の脅威が報告されている。そのため,暗号実装においてサイドチャネル攻撃に対する安全性の評価が重要である。本研究では,新たに深層学習を用いた安全性評価手法を開発した。

杉原 進哉

株式会社ネオレックス

企業における生成AIの試行と活用可能性の模索

ChatGPTの登場以降、テキスト生成AIは一般社会でも広く使われるようになりました。実際に使ってみると将来性が感じられ、発展途上のうちに色々試してみたいと考えています。今回は「業務用途」「自社用にカスタマイズ」「簡単に試せる」という範囲で試行した記録を紹介します。今後もできる範囲での試行錯誤を続けていきたいと考えています。

山本 真之

株式会社デンソー

AGVの荷台への荷物割当てを考慮した集配計画問題の構築的解法

無人搬送車(AGV)の集配計画を最適化する問題(Pickup and delivery problem)としての荷物の車両への割り当てと経路計画に加えて, 縦に複数並ぶAGVの荷台のどこに荷物を置くかの割当についても最適化する新しい数理モデルを提案する. 荷物の荷台への割当は,同時に複数の荷物を載せ降ろしすることで効率化が可能となり,この載せ降ろし方を考慮することを特徴とする. 数理モデルは,集合packing問題をベースにした整数計画問題として定義する. 数理モデルの解法は,工場のAGV制御システムでの応用を考慮し,計算時間要件1秒を満たすよう,rectangular packing問題を部分問題として活用する構築法を提案する.

舟山 啓太

株式会社豊田中央研究所

トポロジカル波動・拡散システムを用いたエネルギー輸送の制御

トポロジカル絶縁体は古典的波動・拡散と組み合わせることで、波動エネルギーの一方向伝播や、拡散現象の異方性といった特異な現象が発現することが知られている。このため、トポロジカル波動・拡散システムは、外部エネルギーレス且つ低損失なエネルギー回収・輸送への応用が期待されている。本研究では、グラフェンから着想を得た六員環構造を用いて、トポロジカル弾性波導波路や二次元熱拡散システムを設計し、弾性波の一方向伝播や導波路同士の結合制御、及び拡散方向が選択可能な熱拡散現象を実証した。