早川 尚志

HAYAKAWA Hisashi

2021年度採用

名古屋大学
高等研究院 / 宇宙地球環境研究所
YLC特任助教

研究領域:情報通信
人文・社会
自然科学一般
その他

専門分野

太陽地球物理学
宇宙天気
環境史

キーワード

太陽地球環境
宇宙天気
環境史
太陽物理学
地磁気

所属学協会

日本天文学会
地球電磁気・地球惑星圏学会

主な研究内容

激甚太陽嵐は地上の送電網や通信網に影響を及ぼす新たな自然災害で、史上最大級のものは現代社会に破局的な影響をもたらす可能性が指摘されている。このような激甚太陽嵐の規模はこれまで1957年以降過去約65年間をカバーするDst指数によって行われてきたが、歴史的な観測事例や年輪・氷床コアの検討から現代観測事例をはるかに上回る現象の存在が指摘されてきた。
 本研究ではこの問題を解決し、不明な点の多い過去の激甚太陽嵐について、過去のアナログ観測記録や歴史文献に残る太陽黒点、地磁気、オーロラの証拠を精査し、その検討の時間幅を一挙に3000年ほどに延伸することを目指す。このように激甚太陽嵐の事例研究を積み上げることで、その規模の上限、発生頻度、発生メカニズムを明らかにし、既存のデジタルデータベースに基づくモデルからの外挿先にこれまでにない拘束点を与えることを目指す。
 そのため、本研究では英国での在外研究も交えて、世界各地の研究機関や文書館からアナログ観測記録と歴史文献を蒐集する。このような記録を正確に読解するため、本研究では各々の観測データ、観測機材、歴史文献に通じる専門家集団と、国や文理の壁を越えた共同研究を展開する。これにより、世界各地の生データを組み合わせて、太陽嵐の編年を3000年前まで押し広げる。

図1:1859年9月の太陽嵐の際にオーロラが見られた地点の分布(Hayakawa et al., 2020, Earth Planets & Space, 72, 122)。

論文

Hayakawa, H., Ebihara, Y., Willis, D. M., Toriumi, S., Iju, T., Hattori, K., Wild, M. N., Oliveira, D. M., Ermolli, I., Ribeiro, J. R., Correia, A. P., Ribeiro, A. I., Knipp, D. J. (2019) Temporal and Spatial Evolutions of a Large Sunspot Group and Great Auroral Storms around the Carrington Event in 1859, Space Weather, 17, 1553– 1569. DOI: 10.1029/2019SW002269.

Hayakawa, H., Mitsuma, Y., Ebihara, Y., Miyake, F. (2019) The Earliest Candidates of Auroral Observations in Assyrian Astrological Reports: Insights on Solar Activity around 660 BCE, The Astrophysical Journal Letters, 884, L18. DOI: 10.3847/2041-8213/ab42e4

研究紹介

researchmap https://researchmap.jp/hisashi.hayakawa

本事業を通じて解決を目指す世界的課題

歴史文献による過去3000年間の激甚太陽嵐の調査と定量復元

本研究課題で取り組むのは、近現代から過去3000年間を遡っての過去の激甚太陽嵐の調査と、その定量的な規模推定である。太陽活動が活発になると、しばしば「太陽嵐」が発生することが知られている。このような太陽嵐の内、稀に生じる極端に大規模なものは電力網や通信網などの近代インフラへ甚大な影響を及ぼすことから、現代社会にとってのいわば新たな災害としての性格を強めており、世界規模でその理解、対策、減災に向けた研究が動きつつある。本研究では、この世界的課題について、世界各国の黒点、オーロラ、地磁気観測などの歴史文献を用いることで科学的知見の時間幅を従来の60年程度から3000年程度に延伸し、激甚太陽嵐の事例研究・俯瞰的研究を観測ベースで積み上げて解決することを提案する。

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