平島 一輝

HEISHIMA Kazuki

2022年度採用

岐阜大学
高等研究院 / 大学院連合創薬医療情報研究科
G-YLC特任助教

研究領域:ライフサイエンス
自然科学一般

専門分野

がん生物学
実験病理学
分子生物学

 

 

キーワード

 

ペタシン
ミトコンドリア生物学
がん特異的代謝
転移阻害

 

 

所属学協会

日本癌学会
日本獣医学会
日本毒性病理学会

主な研究内容

私はがん生物学、実験病理学、分子生物学を専門としており、特にミトコンドリア呼吸鎖複合体Iの阻害剤であるペタシンという低分子化合物の研究・開発を行っています。ペタシンは、日本原産植物のフキノトウから分離した新しいタイプのミトコンドリア呼吸鎖複合体Iの阻害剤であり、がん特異的なエネルギー代謝を標的としてがんの増殖と転移を抑制することが特徴的です。ペタシンは既存化合物と比べて非常に高い複合体I阻害活性を持っており、広範なタイプのがん細胞(乳がん、子宮頸がん、肺がん、大腸がん、膵臓がん、胃がん、膀胱がん、前立腺がん、悪性黒色腫、肉腫、白血病など)に対して強い細胞死や増殖抑制効果を示す一方で、正常な細胞に対してはほとんど毒性を示さないことを発見しました。さらに、複数のがんモデルを使用した動物実験では、増殖抑制効果に加えてがんの肺転移・リンパ節転移を抑制することがわかりました。一方で、調べた範囲では正常細胞や臓器に明らかな毒性はみられませんでした。以上より、ペタシンは、がんの増殖と転移を阻害し、副作用が低いという抗がん剤として有望な性質を持ったシーズ化合物であり、実用化を目指して研究を進めています。

論文

Kazuki Heishima, Nobuhiko Sugito, Tomoyoshi Soga, Masashi Nishikawa, Yuko Ito, Ryo Honda, Yuki Kuranaga, Hiroki Sakai, Ryo Ito, Takayuki Nakagawa, Hiroshi Ueda, and Yukihiro Akao, “Petasin potently inhibits mitochondrial complex I-based metabolism that supports tumor growth and metastasis,” The Journal of clinical investigation (2021), 131(17), e139933

研究紹介

researchmap https://researchmap.jp/kheishima

クラウドファンディング-READYFOR-岐阜大学|フキノトウから副作用の少ない抗がん・転移阻害剤の開発へ(2022/4/28目標金額達成) https://readyfor.jp/projects/fukinoto

本事業を通じて解決を目指す世界的課題

ミトコンドリア栄養代謝を標的とした新しいがん治療戦略

高齢化にともなうがん患者数の著しい増加によって、がん治療の重要性は世界的に高まっている。治療法の発展により生存率も改善されつつあるが、①がん死の主因である転移・再発を防ぐ手立てがない、②治療の副作用による「生活の質」低下、③高価な生物製剤の利用増加によるがん治療の高額化と、それによる所得ごとの治療格差の拡大、といった点が世界的な課題である。これまでに、研究実施者はペタシンという副作用低くがんの増殖と転移を阻害できる全く新しい抗がん剤シーズを同定しており、この作用機序解析と実用化は上記の世界的課題を解決する鍵となる可能性がある。本事業では、異分野融合共同研究により、副作用の低い新しい抗がん・転移阻害薬の創出と詳細なメカニズムの同定を狙い、がんに罹患しても質の高い生活を送れる社会の実現に貢献することを目指す。

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