樋口 諒

HIGUCHI Ryo

2021年度採用

名古屋大学
高等研究院 / 大学院人文学研究科
YLC特任助教

研究領域:社会基盤(土木・建築・防災)
人文・社会

専門分野

建築史
建築ドキュメンテーション
建築アーカイブズ

キーワード

ビザンティン建築
聖堂アーカイブズ
建築と社会
アーカイブズの利用法

所属学協会

日本建築学会
日本ビザンツ学会
西洋中世学会
建築史学会

主な研究内容

地中海の東沿岸部にかつて存在したビザンティン帝国(395~1453年)の建築、特にキリスト教聖堂建築を研究しています。日本ではあまり馴染みのないビザンティン帝国やその文化ですが、帝国がかつて存在した東欧・中東地域では、建築に限らず様々な分野で非常に大きな影響を与えています。ビザンティン帝国は1000年以上にわたって存在したため、その建築もその最初と最後では大きく特徴が異なります。その中でも特に私が注目しているのが、聖像破壊論争(726~843年)の終結した9世紀以降の中・後期ビザンティン建築です。ビザンティン帝国における神学思想や聖堂での典礼儀式の方法の大部分、さらには聖堂の内側を彩る壁画の配置法が確立されたのもこの時期です。しかし一方で、ビザンティン聖堂の建築形式は中期以降むしろ多様化していきます。なぜこの時期に建築形式は多様化していったのか、そしてその理由と建築を取り巻く社会的環境にはどのような関係があるのか、こうした問いを通じて建築と社会の関係性を捉えたいと考えています。
これまでの研究は、建築をいかに記録するかという点に注目した研究と、そうした記録によって得られた情報をもとに建築の地域的・時代的変化を捉える研究に分けられます。後者は、中期ビザンティン建築において一般的な建築形式である内接十字と呼ばれる形式に着目し、その地域性や時代性を論じてきました。一方前者は保存・修復に資する建築の記録法とはどのようなものかという点について研究しており、本事業での研究もその流れに位置づけられます。

 

論文

Ryo Higuchi, Satoshi Nasu, The Derivation of the Cross-in-Square Churches in terms of their Interior Tectonic Configuration: The Genealogy of the Cross-in-Square Churches during the Middle Byzantine Period (1), Japan Architectural Review 2(2019) no.4, 530–544.
DOI: 10.1002/2475-8876.12116

Ryo Higuchi, Tamaki Suzuki, Mina Shibata, Yoko Taniguchi, Murat Gülyaz, “Digital non-metric image-based documentation for the preservation and restoration of mural paintings: the case of the Üzümlü Rock-hewn Church, Turkey” 7 (2016) no.14, 31–42.
DOI: 10.4995/var.2016.4241

研究紹介

Researchmap
https://researchmap.jp/ryo_higuhi

本事業を通じて解決を目指す世界的課題

産学官民で応用可能な三次元聖堂アーカイブズの構築

地中海の東沿岸部にかつて存在したビザンティン帝国の聖堂群は、当時の社会の根幹をなす神学思想を建築と美術によって表現したものであり、そこには壁画や碑文など多様な情報が残されています。しかし、こうした過去の貴重な文化遺産の全てが適切に管理されているわけではなく、この地域で現在も頻発するテロ/内戦ないし増加し続ける観光客による破壊や損失によって危機にさらされています。本研究は、前の世代から受け継いだ文化遺産を適切に記録し次の世代へ継承していくことを現在の我々の責務と捉え、様々な理由で失われていく文化遺産の複合体である建築の適切な記録方法を開拓し、そうした記録を様々な学問領域、さらには学術界にとどまらず産官民で利用可能にするための手法を模索するものです。

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