T-GExから広がる無限の可能性樋口諒さん

樋口諒さん 現:日本工業大学 建築学部建築学科 建築コース 准教授 当時:名古屋大学 高等研究院/大学院人文学研究科 YLC特任助教

 

もともと建築学科で建築学を学んできた樋口さん。中東諸国の大聖堂の美しさに魅了され、「中世建築を調べ、記録する」研究へと大きくフィールドを変更し、研究を進めています。4年間のT-GExフェローを経て、2025年4月から日本工業大学 建築学部 准教授への着任が決まりました。

── ご栄転おめでとうございます!樋口さんは2021年から始まったT-GExの第一期生として採用されましたね。
ありがとうございます。はい、最初の年でしたね。当時私は名古屋大学のYLCに着任したばかりでしたし、T-GExが一体何をやるのかあまり分かっておらず、研究費が貰えるという情報のみで応募をしたような感じでした。

── 実際に参加してみて、どうでしたか?
4年間あっという間でしたね。とはいえ、採用された年はちょうどコロナウイルス真っ只中で大学にすら来られない時代でしたし、その後も2年は日本学術振興会海外特別研究員としてオーストリアで研究していました。2024年の春に日本に戻って来てからようやく対面でのイベントに参加することができ、T-GExに参加しているという実感が湧きました。なので、4年間あっという間でしたね。

T-GExに採択された翌2022年にギリシャ南部のラコニア地方にて聖堂を調査中の樋口さん。樋口さんはこの調査した写真から聖堂の三次元のアーカイブズを作る研究を進めています。

 

── 2024年の4月に開催されたキックオフミーティングに参加され、そこで初めましての挨拶をされていましたよね。
はい。この時初めて他のフェローやアソシエートの方と対面で顔を合わせられました。ちょうど企業アソシエートの方がこのキックオフミーティングの時に声をかけてくださって。そこで頭の中にあるアイデアをお話したことがキッカケで、とりあえずやってみよう、と共同研究を一歩踏み出すことができました。

帰国後すぐのキックオフミーティング。初めての対面参加のイベントで、活発なネットワーキングを行う樋口さん。

 

──その内容でシーズ共同研究費にも応募いただきましたよね。
はい、応募させていただきました。このT-GExシーズ共同研究費は、実際にやれるのかどうか分からないけど、アイデアをちょっと走らせるという位置づけで進めることができたので、とてもありがたかったです。もう一つ、テーラーメード型研究費という研究費もいただいていましたが、これも同様にとてもありがたかったです。T-GExが最大で5年ありますが、早いタイミングからこれらの研究費をいただき研究を進め、アイデアベースから実現可能な形にして、その後それを次の研究に活かして進めていくというやり方はおススメかな、と思います。

──研究費をうまく活用いただけたようでよかったです。T-GExでは、イベントの企画や運営をフェローやアソシエートが中心となって進めるタスクフォースがあります。樋口さんには、2024年度研究成果エキシビションでタスクフォースの幹事リーダーを務めていただき、URAや事務職員も伴走支援させていただきました。実際に経験してみてどうでしたか?
はい、とてもありがたかったです。自分たちでやろうとすると、例えば招待講演をいつ、どのタイミングで呼ぶべきなのか、それすらも分からないので…。ただイベントにオンラインで参加するだけでは絶対分からないことだと思いました。やはり自分で自発的に動いて参加した方が得られるものが多かったです。

──幹事リーダーの仕事は大変ではなかったですか?
初年度は準備など結構大変だったと聞きましたが、今年はそれらを踏まえて更にレベルを上げて運営することができたように感じています。それも、ガントチャートで「このタイミングまでにこれをする」ということが明確にできたおかげです。スケジュール管理の重要性を改めて実感しました。

2024年12月のエキシビションで樋口さんは幹事リーダーを務め、司会進行役を担われました。綿密な準備のおかげで、とてもスムーズに進めることができました。

 

──この1年間、樋口さんにはT-GExプログラムを活用いただいていた印象です。
最後の1年でこのT-GExのプログラムがどういうものだったのか、分かったような気がしています。例えば、段取力みたいなものを最初の年で学べていれば、その後に応用できると思うので、そういう意味ではなるべく早い時期から自発的にプログラム参加し、イベント運営の係も経験するとよいのかな、と思いました。そうすれば、学び体感してから、その知識を実践応用できるのでお得感ありますよね。

──プログラム参加の負担はなるべく減らそうと調整していますが、負担感はどうでしたか?
人によるでしょうが、私はプログラム参加や幹事の負担感は、感じませんでしたね。むしろそれ以上に調査で海外行った時に発生する事務的な手続きの方が大変でした。海外での研究がメインなので、あれこれと発生する伝票の処理が必要なのですが私の場合は全部自分でやっているので…これがどうにか楽になると助かります。

──T-GExとして、みなさんの研究環境改善に向け引き続き考えていきたいと思っています。4月からは新天地ですが、そこでこのT-GExでの経験は活かせそうですか?
T-GExでの経験はすべて活かせると思います。特に印象に残っているのは、PI育成セミナーの内容で、自分は研究室をどうマネジメントするのか、研究室としてどういうチームを作っていくのかを戦略的に考えていくためにとても勉強になりました。研究の方法論とかじゃなく、組織論みたいなことは名古屋大に来ないと学べなかったことだったと思っています。それに、他分野の方と密に接することができたこともとても良い経験であり、T-GExに参加できたことはとても大きかったと思います。

──T-GExフェロー・アソシエートのみなさんにメッセージをお願いします。
日々に忙殺されて幹事などをやるのは二の足を踏むところもあると思いますが、なるべく早いタイミングでやった方がよいと思います。そして、T-GExとして用意されているプログラムには自発的に早めに経験することで、得られることがより多くなると私は思います。また、T-GExは研究費も充実していますし、のびのびとした研究環境が提供いただけるので、ネットワーキングを通じて自分の研究をどんどん広げていく、みたいになるとよいのかな、と個人的には思います。

──自発的に多くの経験を積み、そのすべてを吸収しステップアップされている樋口さん。穏やかな笑顔の奥にある情熱と前向きな姿勢に触れ、私たちも多くの学びを得ることができました。今後、樋口さんの研究がどんどん広がっていくことが楽しみです。今後のご活躍を心から応援しています。

 

インタビュー:熊坂真由子(学術研究・産学官連携推進本部URA)
文:坪井知恵(学術研究・産学官連携推進本部URA)

 

関連リンク
• 樋口 諒
 https://researchmap.jp/ryo_higuhi?lang=ja
• 第103回名大カフェ「中世建築を研究する―ビザンティン建築を調べ、記録する」
 https://youtu.be/4zeaWGL1-S0?si=2DCPIqGyDpdKGHP9


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