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T-GExアソシエート・新谷正嶺博士(中部大学)の研究成果がBiochemical and Biophysical Research Communicationsに掲載されプレスリリースを行いました

T-GExアソシエート・新谷正嶺博士(中部大学)の研究成果がBiochemical and Biophysical Research Communicationsに掲載されプレスリリースを行いました。

雑誌名︓Biochemical and Biophysical Research Communications
論⽂タイトル︓Chaordic Homeodynamics: The Periodic Chaos Phenomenon Observed at the Sarcomere Level and Its Physiological Significance
著者︓Seine A. Shintani
DOI:10.1016/j.bbrc.2025.151712

発表のポイント
●心筋細胞内の筋肉を構成する最小単位であるサルコメア(注1)は自律的に高頻度振動(HSOs)(注2)している。
   今回、このHSOsが個々のサルコメアレベルでは「カオス的なゆらぎ」を伴うにもかかわらず、細胞全体としては規則的で安定したリズムを保つことを、世界で初めて数学的・統計的に証明した。
●本研究では、この現象を秩序(周期性)とカオス(注3)(ゆらぎ)の共存によって維持される動的な恒常性、
  『ケイオーディック・ホメオダイナミクス( ChaordicHomeodynamics)(注4)』という新概念として提唱した。

注1 サルコメア(筋節) 筋肉を構成する最小の収縮単位。カルシウムイオン(Ca2+)の存在下で、筋原線維を構成する主要たんぱく質の一つであるミオシンがアデノシン三リン酸(ATP)をエネルギー源としてアクチンをたぐり寄せるように引き込み、筋肉を収縮させる。カルシウムイオン濃度が低下すると、アクチンはミオシンに結合できなくなり、筋肉は弛緩する。

注2 ⾃律的な⾼頻度振動(HSOs: Hyperthermal Sarcomeric Oscillations、熱筋節振動) 外部からの刺激やカルシウム濃度変化が無くても、サルコメア⾃⾝が収縮・弛緩を繰り返す自励的な振動状態。心筋細胞を生理的範囲の温度(約38〜42℃)に温めると誘発される。カルシウム濃度変動とは独立して起こり、カルシウム変動がある場合でも安定した周期を保つ特徴を持つ。

注3 カオス 外見上は無秩序で予測不能に見えるが、実際には特定の法則や規則に従って生じる現象。ごくわずかな初期条件の違いが、その後の挙動を劇的に変える性質を持ち、天気予報や⽣体現象など、様々な科学分野で研究されている。

注4 ケイオーディック・ホメオダイナミクス(Chaordic Homeodynamics) 秩序(Order)とカオス(Chaos)が共存する動的な恒常性を示す概念。個々のサルコメアレベルではカオス的な振幅のゆらぎを持ちながらも、細胞全体としては規則的で安定した収縮・弛緩リズムが維持されるような、生物が持つ柔軟な制御メカニズムを指す。

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