横井 暁

YOKOI Akira

2021年度採用

名古屋大学
医学部附属病院
病院講師

研究領域:ライフサイエンス

専門分野

生物学
医学
産婦人科学

キーワード

細胞外小胞
エクソソーム
リキッドバイオプシー
バイオマーカー

所属学協会

日本産科婦人科学会
日本癌学会
日本細胞外小胞学会
American Association for Cancer Research
International Society for Extracellular Vesicles

主な研究内容

卵巣がん細胞は極めて容易に腹腔内へ転移を起こし、診断時多くの患者はすでに腹膜転移を伴った進行期の状態という、がんの中でも極めて予後の悪いがん種である。卵巣がんの予後を悪くする大きな要因として①早期発見が困難、②治療困難な腹膜播種性転移を高頻度で来す、という2点が挙げられ、これらの解決の糸口となりえる候補として、細胞外小胞、エクソソームに着目をした。エクソソームはあらゆる細胞が放出する100nm前後の膜小胞でタンパク質や核酸などといった生理活性を持つ分子を内包することが知られ、がんなどの疾患によりそのプロファイルが変化することが分かっていたものの、いかに疾患メカニズムに寄与するかはほとんど明らかにされていなかった。私は卵巣がん細胞由来のエクソソームが腹膜播種モデルマウスにおいて転移を促進することを発見し、その機構に卵巣がん細胞と中皮細胞のエクソソームを介した関わりがあることを明らかにし、さらに、同エクソソームがMMP1メッセンジャーRNAを搭載し、受け手の中皮細胞においてアポトーシスを誘導するメカニズムが存在することを世界に先駆け明らかにした(図、Yokoi et al., Nature Communications 2017)。また、エクソソームに内包されて血中を循環するマイクロRNAを対象とし、4000を超える大規模サンプルの解析により、血清中マイクロRNAの診断バイオマーカーとしての極めて高い可能性を報告した(代表論文1)。次に、卵巣がんが放出するDNA搭載エクソソームの解析を進め、がん細胞がDNAをエクソソームへ輸送するメカニズムを明らかにした(代表論文2)。2020年に米国での留学から帰国後はエクソソームの臨床応用を目指して研究を開始しており、EVに関して種々の研究を展開している。これまで、エクソソーム内のマイクロRNA、メッセンジャーRNA、DNAと、あらゆる細胞外核酸を対象に研究を展開してきた。エクソソームを取り巻く研究情勢は日々変化しており、常にアップデートしつつも、その中で疾患に関わる未知かつ重要な機能を、基礎からトランスレーショナルに関わる部分まで広く追求してゆき、名古屋大学から世界へ、社会へ還元できる新しい知見を発信していくことを目標とする。

論文

Yokoi A, Sood AK et al.. Mechanisms of Nuclear Content Loading to Exosomes. Science Advances. 2019. Nov 20;5(11):eaax8849.

Yokoi A, Kato T and Ochiya T et al., Integrated extracellular microRNA profiling for ovarian cancer screening. Nature Communications. 2018 Oct 17; 9(1): 4319.

研究紹介

リサーチマップ
https://researchmap.jp/akirayokoi

研究大学強化促進事業・若手新分野創成研究ユニット
「ナノテクノロジーによるがん細胞外小胞研究ユニット」
http://www.aip.nagoya-u.ac.jp/ru/menu_b/post-36.html

本事業を通じて解決を目指す世界的課題

変遷する女性のトータルヘルスケア課題-妊娠からがんまで-

女性の様々なライフステージで生じる問題を、細胞外小胞という観点から一元的に検討することで、その課題解決に貢献することを目的とする。現時点での対象とする問題は、不妊症、ハイリスク妊娠、婦人科悪性腫瘍であり、研究事項は1. 効率的な生殖補助医療提供のための不妊治療奏効率バイオマーカーの探索、2. 羊水中EV解析によるハイリスク妊娠/胎児転帰の予測バイオマーカー探索、3. 未病から治療薬選択まで、婦人科がん患者EV解析による新たな診療モデルの構築、の3つであり、血液や尿、卵胞液や羊水、癌性腹水など、その課題に合わせた体液の解析を行い、実地医療へ貢献できる知見の集積を目指す。

インタビュー

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