循環器内科
クローン性造血
腫瘍循環器学

由良 義充
YURA Yoshimitsu
2025年度採用
名古屋大学
医学部附属病院
循環器内科
病院助教
専門分野
キーワード
クローン性造血
免疫
心血管疾患
所属学協会
日本内科学会
日本循環器学会
日本心不全学会
日本腫瘍循環器学会
主な研究内容
心血管病は先進国を含む多くの国で主要な死因とされ、その病態解明は医療における最重要課題です。1960年代のフラミンガム心臓研究によって、高血圧や脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病がリスク因子であることが示され、健康診断や臨床の現場で重視されています。しかし、これらの因子を管理しても心血管病の発症を完全には防ぎきれない例があるため、新たな原因の解明が求められてきました。
近年の大規模臨床研究により、加齢とともに生じる「クローン性造血」という現象が、心血管病の独立したリスク因子であることがわかってきました。クローン性造血とは、造血幹細胞(血液のもとを作る細胞)に遺伝子変異が生じ、その変異をもった細胞が骨髄内で選択的に増殖する現象です。こうして増えた幹細胞から作られる免疫細胞も変異を引き継ぐため、機能が変化してしまいます。クローン性造血は加齢やがん治療によって頻度が上昇し、70歳以上では約1~2割がこの状態にあると報告されています。私たちは、このクローン性造血が心血管病の発症にどのように関わるのかについて基礎研究を行い、世界に先駆けてその機構を明らかにしてきました。具体的には、変異をもつ免疫細胞が血流を介して心臓や血管に入り込み、炎症や組織傷害を引き起こすことで心血管病の発症につながります。これは約半世紀ぶりとなる革新的な心血管病リスク因子の発見として、国内外で大きな注目を集めています。
本研究は、心血管病の発症リスクが高い方の同定やクローン性造血を標的とした治療の開発を通じ、診断・治療体系を変革しうる潜在力を持ちます。一方で、この分野の研究が発達したのは比較的最近で、遺伝子変異のタイプごとに異なる影響や、変異細胞の増殖・炎症をどのように制御するかなど、未解明の課題はまだ多く残されています。今後は、これらを解決し、将来的には個別化医療の実現を通じて人類の健康に貢献することを目指しています。
論文
Yura Y, Miura-Yura E, Katanasaka Y, Min KD, Chavkin N, Polizio AH, Ogawa H, Horitani K, Doviak H, Evans MA, Sano M, Wang Y, Boroviak K, Philippos G, Domingues AF, Vassiliou G, Sano S, Walsh K. The cancer therapy-related clonal hematopoiesis driver gene Ppm1d promotes inflammation and non-ischemic heart failure in mice. Circ Res. 2021 Sep 3;129(6):684-698.
Cochran JD, Yura Y, Thel MC, Doviak H, Polizio AH, Arai Y, Arai Y, Horitani K, Park E, Chavkin NW,Kour A, Sano S, Mahajan N, Evans M, Huba M, Naya NM, Sun H, Ban YH, Hirschi KK, Toldo S, Abbate A, Druley TE, Ruberg FL, Maurer MS, Ezekowitz JA, Dyck JRB, Walsh K. Clonal Hematopoiesis in Clinical and Experimental Heart Failure With Preserved Ejection Fraction. Circulation. 2023 Oct 10;148(15):1165-1178.
研究紹介
Researchmap 由良 義充 (Yoshimitsu Yura) – マイポータル – researchmap
本事業を通じて解決を目指す世界的課題
クローン性造血が拓く心血管病診療の新時代 基礎研究成果を社会実装へ繋ぐ挑戦
我が国を含む先進諸国では、心筋梗塞や心不全といった心血管病が全死亡原因のおよそ30%を占めており、その予防と治療は社会的に喫緊の課題となっています。心血管病は主に、高血圧や脂質異常症といった生活習慣病によって引き起こされると考えられており、これらの治療が進められてきましたが、それでもなお発症を十分に抑えるには至っていません。私はこれまでに、加齢に伴って生じる遺伝子変異をもつ造血幹細胞の増殖(クローン性造血)が、心血管病の発症に関与することを報告してきました。本研究では、これまでの知見を社会実装へと繋げるために、日本におけるエビデンスの構築や、より簡便なクローン性造血の検出法の開発に取り組みたいと考えています。
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