作物学
植物遺伝育種学
植物生理学

黒川 裕介
KUROKAWA Yusuke
2024年度採用
名城大学
農学部生物資源学科作物学研究室
助教
専門分野
キーワード
イネ
葉の撥水性
ガスフィルム
遺伝子マッピング
所属学協会
一般社団法人日本作物学会
一般社団法人日本育種学会
主な研究内容
①イネなどの超撥水性を示す葉が水没した際に葉の周囲に形成される空気層のことをガスフィルムという。冠水時にガスフィルムは水中の葉におけるCO2/O2とのガス交換を促進することで、水中においても光合成/呼吸などの代謝反応を可能にしている。②一般的なイネでは葉の表面と乳頭状突起の周りに多数のワックス結晶が沈着するのに対して、ガスフィルムが欠損するdrp7変異体ではワックス結晶が大幅に減少する。③酸素電極を用いて水中における葉身の光合成量を定量したところ、drp7変異体では、冠水後のガスフィルム消失に伴って、水中での光合成量は普通イネのKinmazeと異なり大きく減少した。drp7変異体を用いて水田栽培下での生存率を調査したところ、田植え移植3週間後にdrp7変異体は溺死した。以上のことから、イネはガスフィルムを長く維持し、水中での光合成を促進することで、耐水性を得ていることが分かった。④drp7変異体(Japonica)とKasalath(Indica)の交配により得られたF2子孫集団5,300個体を用いて遺伝子マッピングを行ったところ、drp7変異体とKinmazeゲノム間でShort chain Dehydrogenase/ Reductase (SDR)ファミリーに属するOsHSD1遺伝子に新規の変異箇所となる1塩基置換が検出された。drp7変異体はガスフィルムが消失することからその原因遺伝子をLeaf Gas Film1 (LGF1)と命名した。Kinmazeとdrp7変異体の葉身の各種表層ワックス成分を定量比較したところ、drp7変異体ではKinamzeと比べて炭素数(C)30:1級アルコールの量が減少したのに対して、C30:アルデヒドの量が増加した。このことから、LGF1はC30:アルデヒドからC30:1級アルコールへの変換に関与しており、イネの葉のガスフィルム維持にはC30:1級アルコールとC30:アルデヒドの量比が極めて重要であることが考えられた。現在は、ガスフィルムの強固なイネを用いて、耐水性の向上を目指した分子育種を進めており、イネ以外の作物(ソバ・繊維作物)に関しても、耐水性評価を行っている。
論文
Yusuke Kurokawa, Keisuke Nagai, Phung Danh Huan, Kousuke Shimazaki, Huangqi Qu, Yoshinao Mori, Yosuke Toda, Takeshi Kuroha, Nagao Hayashi, Saori Aiga, Jun-ichi Itoh, Astushi Yoshimura, Yuko Sasaki-Sekimoto, Hiroyuki Ohta, Mie Shimojima, AI Imran Malik, Ole Pedersen, Timothy David Colmer and Motoyuki Ashikari, “Rice leaf hydrophobicity and gas films are conferred by a wax synthesis gene (LGF1) and contribute to flood tolerance,” New Phytologist (2018) 218(4) 1558-1569
Yusuke Kurokawa, Tomonori Noda, Yoshiyuki Yamagata, Rosalyn B. Angeles-Shim, Hidehiko Sunohara, Kanako Uehara, Tomoyuki Furuta, Keisuke Nagai, Kshirod Kumar Jena, Hideshi Yasui, Atsushi Yoshimura, Motoyuki Ashikari and Kazuyuki Doi, “Construction of versatile SNP array for pyramiding useful genes of rice,” Plant Science (2016) 242 131-139
研究紹介
researchmap https://researchmap.jp/kuro-yu
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