熱工学
デバイス工学
宇宙工学

上野 藍
UENO Ai
2024年度採用
名古屋大学
大学院工学研究科
講師
専門分野
キーワード
スキンデバイス
MEMS技術
物質輸送
バイオデザイン
所属学協会
日本機械学会
日本伝熱学会
日本熱物性学会
主な研究内容
本研究では、鉄欠乏性貧血を早期に発見できる新技術として、「フェリチン検出」×「スキンデバイス」技術の融合を目指しています。従来の血液検査とは異なり、非侵襲的な方法で体内の生理活動をモニタリングすることで、より簡便かつ迅速な貧血の検出を可能にします。
研究の背景と課題 現在、鉄欠乏の検出には採血による血液検査が一般的ですが、病院での検査が必要であり、侵襲性があることが課題です。また、鉄分には「フェリチン」と「ヘモグロビン」の2種類があり、初期の隠れ貧血ではフェリチンが減少し、さらに進行するとヘモグロビンも低下します。しかし、一般的な血液検査では主にヘモグロビンを測定するため、早期の鉄欠乏を発見するのが難しいのが現状です。
研究のアプローチ 本研究では、血液を使用せずに体液中のフェリチンを高感度で検出するスキンデバイスを開発しています。このデバイスは、絆創膏のように皮膚に貼り付けることで、汗などの体液から鉄欠乏の指標となるフェリチンを測定できる仕組みです。技術の中核には、グラフェン電界効果トランジスタ(GFET)を用いた高感度センサーを採用し、さらにMEMS(微細加工)技術を活用してデバイスの応用を進めています。
最終目標と応用展開 本研究は、スタンフォード大学発の「バイオデザイン思考」に基づき、実用性の高い医療機器の開発を目指しています。特に、発展途上国でも使用可能な低コスト・高性能なデバイスの創出を最終目標とし、より多くの人々が手軽に健康管理できる社会の実現を目指します。さらに、この技術は鉄欠乏性貧血の早期発見だけでなく、環境中のウイルス検知や感染症予防などへの応用も期待されています。
本研究を通じて、より簡便で負担の少ないヘルスモニタリング技術の確立を進めていきます。
論文
M. Hashimoto, T. Kawakami, A. Alasli, R. Nomura, H. Nagano, A. Ueno. “JMEMS Letters. 1pt Design and Fabrication of a Micropillar-Pumped Polymer Loop Heat Pipe,” Journal of Microelectromechanical Systems, Vol. 32, No. 6, (2023) 519.
研究紹介
本事業を通じて解決を目指す世界的課題
バイオデザイン思考に基づく発展途上国支援のためのスキンデバイスの創出
全世界で約5億2,870万人が鉄欠乏に悩まされており、日本でもその頻度は先進国の中で最も高い50%に達しています。鉄欠乏性貧血の治療市場は年平均7%成長し、2030年には3兆円規模に達すると予測されています。鉄は脳代謝に不可欠であり、胎児期や幼児期の不足は認知機能低下を引き起こす可能性があります。WHOも「鉄の補充は国にとって費用対効果の高い投資」と宣言しています。
従来の鉄欠乏検出手法は採血が必要で、侵襲性があるため自宅でのモニタリングが難しいという課題があります。本研究では、汗などの体液からフェリチンを検出するデバイスを開発し、非侵襲的に早期の鉄欠乏を検知できる技術を目指しています。この技術は、スタンフォード大学発のバイオデザイン思考に基づき、発展途上国でも利用可能な医療機器の創出を最終目標としています。
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