柘植 紀節

TSUGE Kisetsu

2024年度採用

岐阜大学
高等硏究院/工学部大学院自然科学技術研究科
G-YLC特任助教

専門分野

電波天文学
X線天文学

キーワード

星間ガス
星形成
多波長天文学

所属学協会

日本天文学会
国際天文学連合
宇宙電波懇談会
高エネルギー宇宙物理連絡会

主な研究内容

星の誕生や銀河の進化を理解するためには、銀河を満たす星間水素ガスの探究が不可欠です。私は、銀河のエネルギー収支を支配する「拡散星間プラズマ」の形成機構の解明を目的として研究を進めています。その実現には、X線・電波・光赤外線を用いた観測が欠かせません。なぜなら、星間ガスは、-263度の水素分子雲ガスから、約1000万度の高温プラズマまで、幅広い物理状態をとるため、その全容解明には広範な波長での観測が本質的だからです。しかし、これまでの研究では、このような物理状態が大きく異なるガス同士は、互いに影響を及ぼさないと考えられていました。一方、最近の私たちの研究によって、異なる物理量を持つガスの状態変化 (相転移) は頻繁に起こっており、銀河進化に重要な役割を果たしていることがわかってきました。具体的には、銀河同士の衝突は、銀河内のガスを急速に電離・加熱し、さらに多数の大質量星を含む爆発的な星形成を引き起こしていたのです。これらの物理現象を観測的・理論的にさらに定量化するため、eROSITA、XRISM、ALMA などの世界最先端の観測装置を用いた研究を進めています。宇宙の至るところで起きている「銀河同士の衝突」を理解することは、銀河スケールのエネルギー収支のみならず、宇宙スケールでのエネルギーや物質の動態を理解する手がかりになると期待しています。

論文

Tsuge, H. Sano, K. Tachihara, C. Yozin, K. Bekki, T. Inoue, N. Mizuno, A. Kawamura, T. Onishi, Y. Fukui, “Formation of the Active Star-forming Region LHA 120-N 44 Triggered by Tidally Driven Colliding HI Flows”, The Astrophysical Journal, Volume 871, 44

K. Tsuge, K. Tachihara, Y. Fukui, H. Sano, K. Tokuda, J. Ueda, D. Iono, “The formation of the young massive cluster B1 in the Antennae Galaxies (NGC 4038/NGC 4039) triggered by cloud-cloud collision”, Publications of the Astronomical Society of Japan, 73, 417

研究紹介

researchmap https://researchmap.jp/ktsuge

本事業を通じて解決を目指す世界的課題

多波長観測で探る星間ガスの進化 – 星の誕生から終焉まで

銀河を満たす星間ガスの進化過程の解明は、星の誕生や銀河の成り立ちを探るうえで本質的です。星間ガスは、電波で捉える極低温 (約−263) の水素分子ガスから、X線を放つ約1000万度の高温プラズマまで、幅広い温度・密度の形態をとります。これらの物理状態を理解するには、多波長観測データの組み合わせが欠かせません。しかし、観測できる物理状態や手法の違いが大きいため、波長を跨いだ多角的な研究が立ち遅れていました。本研究では、各観測波長の専門家と、最先端の観測装置を用いた国際共同研究を推進することで、従来の研究分野の垣根を超えた星間ガスの解析を行い、星の誕生から終焉までにわたる、銀河のエネルギー・物質の循環の理解を目指します。

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