市川 俊輔

ICHIKAWA Shunsuke

2023年度採用

三重大学
教育学部
准教授

専門分野

生化学
応用微生物学
生物工学

キーワード

環境微生物
腸内細菌
複合微生物系
メタゲノム解析

所属学協会

日本農芸化学会 
日本生物工学会 
日本分子生物学会 
日本化学会 
日本理科教育学会

主な研究内容

私たちは健康・環境など多様な場面で微生物機能を活用してきました。一方で微生物の大部分は未探索な状況 (Microbial dark matter) であるため、これら微生物の解析手法を確立し、その機能を明らかにすることで、新しい利用価値を見出せる可能性があります。私はたとえば腸内細菌の機能について着目して研究しています。
 私たちの腸内には多種の細菌が存在しており、その多様性が崩れた状況(ディスバイオーシス)は、種々の疾患に関わることがわかっています。また、腸と脳は相互に影響を及ぼしていることが知られており、この関係は脳腸相関とよばれています。たとえば、腸内環境に影響を与えるプロバイオティクスとして知られる乳酸菌によって、不安行動が軽減される事例が報告されています。私は、昆虫からヒトまで広範囲の動物腸内に存在するが、その機能の解析が進んでいない細菌Paraburkholderiaに着目しました。Paraburkholderia属の細菌P. sabiaeを投与した水槽でゼブラフィッシュを飼育し(細菌投与ゼブラフィッシュ)、その行動や腸内細菌叢を解析することで、新たな脳腸相関メカニズムを明らかにしました。
 細菌投与ゼブラフィッシュでは不安行動が軽減されていました。その腸内細菌由来のゲノムDNAを解析した結果、腸内細菌叢が大きく変化しており、特にタウリン代謝系が変化していることを推定しました。そこで細菌投与ゼブラフィッシュの脳内でのタウリンを測定したところ、その濃度が上昇してい ることがわかりました。タウリンは神経伝達物質として、人間やゼブラフィッシュのストレス行動を抑制する働きがあると報告されており、本件でも腸脳相関を介して同様の抗不安作用を発揮したと考えられます。
 以上の通り、P. sabiaeを与えることでゼブラフィッシュ不安行動軽減が観察されること、この現象は腸内細菌叢の変動や脳内タウリン濃度上昇といった腸脳相関を介したメカニズムによって生じることを明らかにしました。

論文

Shunsuke Ichikawa, Reimi Abe, Haruka Fujimoto, Koushi Higashi, Liqing Zang, Hiroko Nakayama, Izumi Matsuoka, and Yasuhito Shimada, ”Paraburkholderia sabiae administration alters zebrafish anxiety-like behavior via gut microbial taurine metabolism,” Frontiers in Microbiology 14 (2023) 1079187

Shunsuke Ichikawa, Daisuke Ito, Sayuri Asaoka, Reimi Abe, Norito Katsuo, Toshiyuki Ito, Daichi Ito, Shuichi Karita, “The expression of alternative sigma-I7 factor induces the transcription of cellulosomal genes in the cellulolytic bacterium Clostridium thermocellum,” Enzyme and microbial technology 156 (2022) 110002

Shunsuke Ichikawa, Mika Okazaki, Mina Okamura, Norihiro Nishimura, Hideto Miyake, “Rare UV-resistant cells in clonal populations of Escherichia coli,” Journal of photochemistry and photobiology B 231 (2022) 112448

研究紹介

researchmap https://researchmap.jp/shunsuke.ichikawa
ICHIKAWA Shunsuke website https://paperreviewsforfiveminutes.com/shunsukeichikawa/

本事業を通じて解決を目指す世界的課題

価値創造を目指した新規微生物探索・機能解明

微生物は土壌圏・水圏・動物腸内をはじめ、あらゆる環境に生息しています。たとえば食品の発酵や有機物分解での環境浄化など、多様な場面で私たちは微生物を活用してきました。しかしながら、地球上に存在する微生物のほとんどは、いまだ未探索でその特徴が明らかになっていません。難培養微生物培養・微生物菌叢の複合培養、メタゲノム解析・シングルセルゲノム解析、モデル動物を用いたスクリーニング系などを駆使して、未探索な新規微生物の機能を明らかにすることで、新たな価値の創造することを目指します。T-GExプログラムを通して、東海圏を中心とした多様な企業との議論しながら研究を進めることで、社会実装可能な価値創造・社会課題解決のかたちを創り上げることに挑みます。

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