東 小百合

HIGASHI Sayuri

2023年度採用

岐阜大学
高等研究院/大学院連合創薬医療情報研究科
G-YLC特任助教

専門分野

生体分子化学
合成生物学
超分子化学

キーワード

自己集合
刺激応答性分子
人工細胞

所属学協会

日本化学会
日本ケミカルバイオロジー学会
日本生化学会
日本高分子学会

主な研究内容

私は、生体分子を用いて新規の機能性材料の開発に取り組んでいます。
 例えば、自然界で豊富に存在するオリゴ糖としてグルコサミンが知られています。グルコサミンに還元反応により脱離する人工分子パーツを修飾し、グルコサミン誘導体を合成しました。その物性について調べると、超分子ヒドロゲルと呼ばれる水の流動性が低下したゼリー状物質を形成することを発見しました。この超分子ヒドロゲルは、グルコサミン誘導体が水中で自発的に自己集合して直径数10 nmのナノファイバーに組み上がることによって構築されています。さらに、その超分子ヒドロゲルが還元反応により溶けることも見出しました。合成したグルコサミン誘導体は、還元反応を刺激とするゲル化剤として「世界最小クラス」の洗練された分子といえます。
 上記とは別に、配列設計を工夫することで自己集合性を獲得した2種類の異なる生体分子 (自己集合性核酸, ペプチド) を構成因子として用いた「多成分ナノ材料」の開発も行っています。自己集合性核酸とペプチドは、それぞれ単独でファイバー状や球状の構造体を構築できる分子を使用しており、混合溶液内でもそれらは自己と他を識別して (self-sorting) 互いに独立した超分子構造体を構築できることを見出しました。self-sorting現象を基に構築したこの多成分ナノ材料の魅力は、単独系で個々の構造体が有する物性・機能が集約されている点です。複数の機能を備えた多成分ナノ材料の魅力を活かした応用を今後も探索していく予定です。
 また、最近は人工細胞モデルで知られる巨大単層リポソーム (Giant Unilamellar Vesicle: GUV) を用いた研究も進めています。

論文

S. L. Higashi, A. Shibata, Y. Kitamura, K. M. Hirosawa, K. G. N. Suzuki, K. Matsuura and M. Ikeda, “Hybrid Soft Nanomaterials Composed of DNA Microspheres and Supramolecular Nanostructures of Semi-artificial Glycopeptides,” Chemistry –A European Journal (2019), 25, 11955–11962.

S. L. Higashi and M. Ikeda, “Development of an amino sugar-based supramolecular hydrogelator with reduction responsiveness,” JACS Au (2021), 1(10), 1639–1646.

研究紹介

researchmap https://researchmap.jp/s_higashi
ORCiD    https://orcid.org/0000-0001-8488-4808

本事業を通じて解決を目指す世界的課題

CAR-T細胞療法の課題解決を目指した人工細胞型分子ロボットの創製

近年、細胞に医薬品としての機能を付加して利用する「細胞医薬」が新規の創薬モダリティとして注目されています。特に、免疫B細胞が作り出す抗体と殺傷能力の高いキラーT細胞を遺伝子改変して組み合わせたCAR (キメラ抗原受容体)-T細胞は、白血病や悪性リンパ腫など血液がんに対する標準医薬として認証され、高い奏功率を示すことが分かってきました。しかし、組織や臓器で発症する固形がんに対しては十分な治療効果が認められていません。その大きな理由として、固形がん細胞周辺で高密度に発達した細胞外マトリックス (ECM) またはがん微小環境がCAR-T細胞の侵入を妨げていることが挙げられます。そこで私は、bottom-up式に構築する人工細胞および新規に開発する環境応答性分子を用いて固形がんを標的とする治療用細胞型分子ロボット (CMR) を開発し、CAR-T細胞療法で露呈した問題の解決を目指します。

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