石塚 紳之介[所属期間 令和4年4月-令和5年8月]

ISHIZUKA Shinnosuke

2022年度採用

名古屋大学
高等研究院/宇宙地球環境研究所
YLC特任助教

研究領域:環境・農学 自然科学一般

専門分野

大気化学
宇宙化学
物理化学

キーワード

大気エアロゾル
宇宙ダスト
気液界面
核生成と成長

所属学協会

日本大気化学会
日本結晶成長学会
日本地球惑星科学連合

主な研究内容

自然界にはナノ、マイクロスサイズの微粒子が普遍的に存在し、物理的、化学的に重要な役割を担っています。地球大気には液相、固相の微粒子 (エアロゾル) が漂っており、地球の温暖化や大気汚染に密接に関わっています。また,宇宙空間には、氷に覆われた無機鉱物の微粒子 (ダスト) が漂っています。ダストはあらゆる天体に存在し、物理履歴のトレーサーとなるだけでなく、触媒として化学反応場を供し、星、惑星形成の材料ともなります。しかし、エアロゾルやダストがどのように生成・成長・変質していくのか、分子レベルでは明らかになっていません。私は、エアロゾルやダストのサイズが小さいために、大きい物質 (バルク) とは異なる現象が起こる可能性に着目しています。

粒子サイズが小さくなると、体積当たりの表面積が大きくなるために界面特有の現象が顕著となります。水滴であれば、容易に高過飽和な準安定状態をとることができるようにもなります。また,10 nm以下ではバルクとは異なる物性が顕わになります。エアロゾルやダストが「小さい」物質であるという特徴を考慮することで、地球・宇宙における物質進化に迫ることができるのではないかと考えています。
これまでは、赤外分光法を用いて気相から微粒子が生成するメカニズム、水滴表面に生じる化学反応中間体を直接検出できる質量分析法によって、有機分子の重合メカニズムを調べてきました。現在は、光ピンセットや環境制御型透過型電子顕微鏡を応用し、エアロゾルが環境変化 (温度、湿度、光照射、気相分子との化学反応) に対して、どのように応答するのかを明らかにすることを目指しています。本実験では、標準物質や実験試料の有機合成、微小空間での環境計測 (微細加工)、表面の疎水化処理、レーザービーム形状制御など、多くの改善の余地が残されており、共同研究によって解決できるのではないかと期待しています。多様な分野の知見や手法を組み合わせ、発展することで、① 気相からの核生成と成長、② 気相中の微粒子 (1 nm-10 mm) の相転移・表面反応素過程を理解し、③ 地球・宇宙における微粒子の働きを定量的に評価することで、微粒子の「一生」を解明することを目指します。

論文

Ishizuka, S., Kimura, Y., Sakon, I., Kimura, H., Yamazaki, T., Takeuchi, S. and Inatomi, Y. Sounding-Rocket Microgravity Experiments on Alumina Dust. Nature Communications, 2018, 9(1), 3820.

Ishizuka, S., Matsugi, A., Hama, T. and Enami, S. Interfacial Water Mediates Oligomerization Pathways of Monoterpene Carbocations. The Journal of Physical Chemistry Letters, 2020, 11 (1), 67-74.

研究紹介

researchmap https://researchmap.jp/Shinnosuke_Ishizuka

Google Scholar https://scholar.google.co.jp/citations?user=L34LlUIAAAAJ&hl=ja

本事業を通じて解決を目指す世界的課題

ナノサイズ不均質構造を考慮したエアロゾル吸湿性評価

地球の大気中には、エアロゾルと呼ばれる液相・固相の微粒子が漂っています。太陽光の吸収と散乱,および雲 (水滴) が形成するのを助けることで、地球の温度を上げたり、下げたりすると考えられています。また、年間約400万人が環境汚染によって死亡していると試算されており、PM2.5 (直径2.5 mm以下のエアロゾル) が主因であえると考えられています。気候影響を評価し、大気汚染対策を講じる上で、エアロゾルが大気中の水分子とどのように相互作用するのか理解する必要があります。本事業では、地球の気候に多大な影響を与える0.01-10 mmの無機塩と有機物の混合エアロゾルに着目し、粒子内部に生じるナノサイズの不均質構造が吸湿性をどのように変化させるのか解明することを目指します。

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